漢字ワールドものがたり 第2部 こわれた橋のむこう
第3話つくる人の工夫
六人は、少しずつ高くなっていく草の道を歩いていた。
道の下には、さっき見つけた小さな水路がある。遠くには、木の間からお城の屋根が見えていた。
「ずいぶん高いところまで来たね!」
ソラが言うと、ルウが空から答えた。
「ここからだと、遠くまで見えるね!」
道はまだ先へつづいている。
けれど、お城へ行けるかどうかは分からない。
タクミは足元の草を見ながら、さっきから別のことを考えていた。
「ねえ、みんな。道しるべのことなんだけど」
「何か思いついたの?」とアカリ。
「うん! どっちの道へ行けばいいか分かるように、矢印をつけたらどうかな?」
タクミは道ばたに落ちていた木の板をひろった。
板のはしには、小さな穴がある。
「ここに棒を通したら、くるっと回せるかもしれない!」
「回せるの?」とソラが目をかがやかせた。
「うん! 行き先に合わせて、向きを変えられるんだ!」
タクミは、板を手にしたまま、あれこれ考え始めた。

六人は、道しるべを置くと決めた分かれ道へもどった。
タクミは、ひろった板に細い枝を組み合わせ、小さな札を作っていた。
「できた! ここを回すと、矢印の向きを変えられるんだ!」
タクミは札を立て、矢印を草にかくれた道へ向けた。
「すごい!」とソラ。
「でも、まだお城へつづくか分からないよね」とアカリが言った。
「うん。今はためしてみるだけ!」
タクミはうなずいた。
ソラは、古い道しるべの方から歩いてきて、札を見た。
「うん! こっちの道だって分かるよ!」
レイは分かれ道の横へ歩いた。
「こっちからも見てみるか」
そのときだった。
ひゅうっと風がふいた。
くるり。
軽い札が回った。
「あっ!」
タクミが声を上げた。
矢印は、草にかくれた道ではなく、こわれた橋へつづく道をさしていた。

「これじゃ、ちがう道を教えちゃう!」
ソラが言った。
タクミは札をもとの向きにもどした。
「おかしいな。回せるようにしたのに……」
「回せるから、風でも回ったんじゃないか?」とレイ。
「そうか……」
タクミは板を見つめた。
矢印がくるくる回ったら、おもしろいと思った。
もっと上手に回るしくみも作れそうだ。
でも、それでは何のための道しるべだろう。
「ねえ、みんな。もう一度、見てくれる?」
タクミは、札を持ち上げた。
「初めてここへ来たつもりで、どっちの道を通るか教えてほしいんだ」
アカリは、少しはなれたところから見た。
「今はこっちの道をさしてるね。でも、草にかくれて、下の方が見えないよ」
レイも反対から見てみた。
「道の手前に置いた方がよさそうだな」
ルウが羽を広げた。
「矢印だけじゃなくて、言葉も読めるといいね!」
タクミはみんなの話を聞いた。
回るしくみをもっとよくすることばかり考えていた。
でも、大切なのは、みんなが正しい道をえらべることだ。
「分かった! 回らなくてもいいんだ!」
タクミは、板を支える枝を二本にふやした。
札がくるくる回らないように、しっかりと固定する。
そして、アカリが見つけた、分かれ道の手前の見やすい場所へ置いてみた。
ソラが歩いてきて、札を見上げた。
「今度はよく見える!」
「こっちから見ても分かるぞ」とレイ。
タクミは、ほっとした。

「やった! これなら使えそう!」
タクミは、札の形をもう一度たしかめた。
作るのは、やっぱり楽しい。
でも、自分がおもしろいと思うだけでは、いい道しるべにはならない。
だれかが見て、ちゃんと分かるものにしたい。
「ねえ、タクミ。もう立てちゃう?」とソラが聞いた。
タクミは首をふった。
「まだだよ。こっちの道が、本当にお城へつづいてるか、たしかめてないから」
「そうだった!」とソラ。
タクミは札を大切にかかえた。
「ちゃんと分かったら、ここに立てよう!」
六人は、もう一度、高台へつづく草の道を歩き出した。
タクミは、手の中の札を見て、にっこりわらった。
今度は、だれかの役に立つものを作れそうだった。