漢字ワールドものがたり 第1部 きえた道しるべ
第4話答えを言わない人
三まいの字札をそろえたソラたちは、草の道を歩いていた。細い水の流れは、もう後ろに見えない。
「『友』『進む』『作る』。あと一まいだよね」
ソラが指をおると、タクミは字札の入った手をじっと見た。
「四まいそろえたら、道しるべの字がもどるのかな」
「そのためにも、さいごの一まいをさがそう!」とアカリが言った。
道のわきには大きな木があり、木の下に一人の大人が立っていた。ソラたちの持つ字札へ、目を向けている。
「何かをさがしておるようじゃな」と、その人が言った。
「はい! ぼくはソラ。道しるべからとんだ字をさがしてるんです。あなたは?」
「わしはシンじゃ。ソラ、よければ話を聞かせておくれ」
ソラは道しるべの四つのくぼみと、これまでに取りもどした三まいの字札を説明した。アカリ、レイ、タクミも、それぞれ見たことを話した。ルウもそばで話を聞いていた。
「そうか、そうか。では、あと一まいはどこにあるかのう」とシンが言った。
レイが木のまわりを見た。
「風でとんだなら、木のえだに引っかかっているかもしれない」
「上はどうかな?」とルウが聞いた。
ソラは見上げた。はっぱの間に、何か四角いものが見えた気がする。
「あっ! あそこ!」

しかし、字札は手のとどかない枝の間にはさまっていた。木登りをするには高すぎる。
「ぼく、さっきのえだで取れるかためす!」とタクミが言った。
「その前に、どこへ落ちそうかも見ておこう」とレイがこたえた。
アカリが木の下を見わたした。
「こっちに草がたくさんあるよ。もし落ちても、見つけられそう」
ソラは、木から少しはなれて見てみた。はっぱのすき間が広がり、字札のはしが見えた。
「こっちからなら見える! タクミ、えだの先を少し右へ!」
ルウが上から場所をたしかめると、タクミは長いえだの先で、字札にそっとふれた。
字札がはっぱをすべって、草の上へ落ちた。
アカリがすぐに見つけた。
「ほら! 四まい目!」
その札には、「考」と書かれていた。
「『考える』の『考』だね」とソラが言った。

「四まいそろった! さっそく道しるべへもどろう」とレイが言った。
だが、ルウが字札をならべると、タクミは首をかしげた。
「ぼくたち、道しるべにどう入れるか、まだ分かってないよね」
「見つけた順番で入れればいいんじゃない?」とソラが言った。
レイは首をふった。
「そうとはかぎらない。道しるべには、字のないところだけじゃなく、ほかの字も残っていた」
ソラはシンの方を見た。
「シンさんなら、どう入れるか分かる?」
シンは四まいの字札を見てから、ソラたちの顔を見た。
「まず、道しるべにどんな言葉が残っていたか、覚えておるかな」
「『□と□え、□って□む』だよ」とルウがこたえた。
「では、その四つの空いたところに、どの字が入りそうかのう」
「それを教えてほしいんだけどな」とソラが小さく言った。
シンはおこらず、少し考えた。
「わしの考えを先に話すこともできる。じゃが、ソラ、ここまでみんなでどうやって字札を見つけてきたかな」
アカリが先に口をひらいた。
「一人でできないとき、みんなに手つだってもらった!」
「俺は、早く進むことばかり考えて、道を見直した」とレイ。
「ぼくは、道具を作ることに夢中だった」とタクミがつづけた。
ソラは字札を一まいずつ見た。
「ぼくたち、字をさがすたびに、何か考えてたんだね」
「そうじゃな。では、そのことをおぼえておいて、道しるべの前でもう一度考えてみてはどうかな」とシンが言った。
ソラはうなずいた。答えをすぐ聞けないのは、少しもどかしい。でも、自分たちで見つけた字なら、自分たちでたしかめたい。
「うん。ぼく、まずはめてみる。それで合わなかったら、みんなでもう一度考えよう」
「いいね!」とアカリが言った。
シンもいっしょに、道しるべへ向かうことになった。六人は、四まいの字札を持って歩き出した。