漢字ワールドものがたり 第1部 きえた道しるべ

第5話道しるべに字がもどる日

六人が道の分かれ目へもどると、古い木の道しるべが見えてきた。風はやんでいたが、板(いた)にはまだ四つのくぼみがあいている。

「ここだ! ぼくが最初(さいしょ)に見つけたときのままだ」とソラが言った。

ソラは、持(も)っていた四まいの字札(じふだ)を草の上にならべた。

「『友』『進(すす)む』『作る』『考える』。この順番(じゅんばん)で見つけたんだよね」

「じゃあ、入れてみよう!」とアカリが言った。

タクミが木のくぼみをたしかめ、ソラは最初(さいしょ)の札(ふだ)をはめた。レイも手つだい、四まいを順番(じゅんばん)に入れてみる。

「入った! でも……」とソラは首をかしげた。

板(いた)に残(のこ)る文字と合わせると、字を見つけた順番(じゅんばん)では、二つ目と四つ目が前後の字につながらなかった。字はそろっているのに、何を言いたいのか分からない。

「これじゃ、言葉(ことば)にならないね」とルウが言った。

「見つけた順番(じゅんばん)が、入れる順番(じゅんばん)とはかぎらない」とレイが言った。

「せっかく全部(ぜんぶ)そろえたのに」とソラは小さくつぶやいた。すぐそこまで来たのに、まだ分からない。気持(きも)ちばかりが先へ進(すす)みそうになる。

アカリがソラのとなりへ来た。

「でも、四まいともあるんだよ。みんなで見つけたんだから、みんなで考えよう!」

古い木の道しるべの四つのくぼみに、見つけた順番で「友」「進」「作」「考」の字札が入っている。板の言葉は「友と進え、作って考む」と読めてしまう。考え込むソラ、アカリ、タクミ、レイ、シンと、道しるべの上のルウ

シンがソラへたずねた。

「ソラ、空いたところだけでなく、道しるべに残(のこ)っておる字も見てごらん」

タクミは札(ふだ)を一まい外し、草の上にならべた。

「木の形は同じだ。どこにでも入るみたい。だから、場所(ばしょ)じゃなくて、字の意味(いみ)を考えないと」

レイが板(いた)の残(のこ)った文字をよく見た。

「一つ目のあとには『と』、二つ目のあとには『え』がある。三つ目は『って』、四つ目は『む』だ」

ルウがうなずいた。

「どんな言葉(ことば)なら、つながるかな。前や後ろの字もいっしょに見てみよう」

「『作って』なら、三つ目は『作』だ!」とタクミが言った。

「うん。じゃあ、四つ目は?」とアカリ。

レイは「進(すす)む」の字札(じふだ)を手に取(と)った。

「『進(すす)む』だな。あの石の道でも、どう進(すす)むか考えた」

ソラは二まいを三つ目と四つ目のくぼみに入れた。

「作って進(すす)む。ここは読めた! あと二つだ」

「残(のこ)ったのは『友』と『考』だね」とルウが言った。

アカリは一まい目の札(ふだ)を見た。

「『友と』って、友だちといっしょに、ってことかな」

ソラはうなずいた。

「アカリがいっしょにさがしてくれたから、『友』を見つけたんだよね」

「それなら、二まい目は?」とレイが聞いた。

ソラは「考」の札(ふだ)を見つめた。

「『考え』だ! みんなで考えて、作って、進(すす)むんだ!」

ソラが一まい目に「友」、二まい目に「考」をはめると、ようやく言葉(ことば)がつながった。

「友と考え、作って進(すす)む」

六人は、そろった言葉(ことば)を声に出して読んだ。

「見つけた順番(じゅんばん)じゃなかったんだね」とアカリがわらった。

「字の意味(いみ)を見たら、分かった」とレイが言った。

「でも、この言葉(ことば)、ここまでのぼくたちのことみたい」とタクミがつづけた。

今度(こんど)は札(ふだ)が外れないよう、タクミがくぼみをたしかめた。ソラとレイが一まいずつ入れ直し、アカリはずれていないか見ていた。

「うん。ちゃんとはまってるよ!」とアカリが言った。

「これで道しるべの言葉(ことば)がもどったね」とルウが言った。

道しるべの字札が「友」「考」「作」「進」の順に入れ直され、「友と考え、作って進む」と読める。道しるべの前でよろこぶソラ、アカリ、タクミ、レイ、シン、ルウ

ソラは道しるべから少しはなれ、全体(ぜんたい)を見上げた。

「……あれ? 字札(じふだ)のふちの線が、つながってる」

四まいの字札(じふだ)のふちには、それぞれ短(みじか)い線がほられていた。見つけた順番(じゅんばん)で入れたときは、線はばらばらだった。正しくならべた今は、四本の線が一つにつながり、大きな矢印(やじるし)になっている。

「この矢印(やじるし)は、あっちの道をさしてるね」とルウが言った。

レイは矢印(やじるし)の先を見た。

「道が曲(ま)がっている。少し先まで見えるところへ行こう」

六人は道しるべのそばから数歩進(すす)んだ。草の道がのびる先に、遠くの城(しろ)が見える。

「お城(しろ)だ!」とソラがさけんだ。

「さっきの矢印(やじるし)は、お城(しろ)の方へつづく道をさしてたんだね」とアカリが言った。

漢字(かんじ)の世界(せかい)へ来たとき、ソラにはあの城(しろ)がただ遠くに見えるだけだった。今は、そこへつづく道が分かる。

「ぼく、あの城(しろ)も見てみたい。でも、帰る道のことも、わすれたくないな」

シンが言った。

「ソラ、これからどこへ行くかは、仲間(なかま)といっしょに考えられるじゃろう。わしは、まずこの道しるべを直したことを、よろこびたいのう」

ソラはふり向(む)いて、道しるべを見た。

「うん! ぼく一人じゃできなかった。みんな、ありがとう!」

「こちらこそ!」とアカリが言った。

レイは小さくうなずき、タクミはほっとした顔で木の板(いた)を見上げた。ルウは、ソラのそばで羽を休めた。

そのとき、ソラは道しるべのうら側(がわ)に、小さなしるしがあることに気づいた。

四まいの字札(じふだ)とは別(べつ)の、小さなしるしだった。何をあらわすのかは分からない。

道しるべを裏側から見たところ。板の右はしに、丸と短い線を組み合わせた小さなしるしが彫られている。手前でおどろくソラと、そちらを羽で指すルウ

「ルウ、あれは何だろう?」

「さあ。まだ分からないこともあるね」

ソラは、しるしと、道の先に見える城(しろ)を交互(こうご)に見た。

この世界(せかい)には、まだ知らないことがたくさんある。帰る道も、まだ見つかっていない。

それでも、今は一人じゃない。

「よし。次(つぎ)は、どんなものが見つかるかな」

ソラがそう言うと、ルウがそばでうなずいた。六人は、字のもどった道しるべの前で、新しい道を見つめた。

第5話までに取り戻した字札

  1. 友
  2. 進
  3. 作
  4. 考

この話に出てきた漢字

字をおすと、その字のページでくわしく調べられます。

この話に出てくるキャラクター