漢字ワールドものがたり 第2部 こわれた橋のむこう

第1話わたしの考え

六人は、草にかくれたもう一つの道を見つめていた。

細い道は、草の間をぬうようにのびている。その先がどこへつづくのかは、まだ分からない。

「ぼく、ちょっと行ってみたい!」

ソラが言うと、ルウも羽を広げた。

「上から見てみようか?」

「俺(おれ)は、道がどこまでつづいているか知りたいな」とレイ。

タクミは、足元の小石を見ながら考えていた。

「道しるべを作るなら、何を使(つか)おうかな」

みんな、もう次(つぎ)のことを考えている。

アカリも早く先へ行ってみたかった。

でも、さっきから一つだけ気になっていることがあった。

こわれた橋(はし)のことだ。

あの分かれ道から、橋(はし)がこわれているところは見えただろうか。

「あのね、みんな……」

アカリが口を開(ひら)いたとき、ソラが草の道へ歩き出した。

「見て! こっちにも道がつづいてるよ!」

「ほんとだ!」とルウが羽を広げる。

レイも、ソラのあとを追(お)って歩き出した。

アカリの声は、みんなには届(とど)かなかった。

だれもわざと聞かなかったわけではない。みんな、新しい道を見つけて楽しそうだった。

アカリも、いっしょに行きたい。

今、わざわざみんなを止めなくてもいいのかもしれない。

あとで言えばいいかな。

そう思って、アカリは口をつぐんだ。

けれど、歩き出そうとした足が止まった。

もし、あとからだれかがあの道を通ったら?

橋(はし)がこわれていると知らずに、ずっと先まで行ってしまうかもしれない。

やっぱり、気になる。

みんなの楽しそうな気持(きも)ちも大切だ。

でも、わたしが気になっていることも、大切にしたい。

アカリは顔を上げた。

「みんな! ちょっと待(ま)って!」

今度(こんど)は、はっきりした声でよびかけた。

ソラがふり向(む)いた。

「どうしたの、アカリ?」

「わたし、たしかめたいことがあるの。橋(はし)のことなんだけど……」

「橋(はし)?」

アカリは、こわれた橋(はし)へつづく道をさした。

「ここから、橋(はし)がこわれているところって見えるかな?」

ソラは目をこらした。

「うーん。道は見えるけど……」

その先で草の道は少し曲(ま)がっている。橋(はし)のまん中は、ここからでは見えなかった。

「じゃあ、もう少し先まで行ってみよう!」

アカリは歩き出した。

六人も、そのあとにつづいた。

分かれ道で、アカリが橋へつづく広い道をさす。右には草にかくれた細い道がある

アカリは、十歩ほど進(すす)んで立ち止まった。

「ここならどうかな?」

ソラがのぞいてみる。

木の橋(はし)のはしが、草の向(む)こうに少し見えた。

けれど、板(いた)のなくなったまん中は、まだ見えない。

「もっと先に行かないと分からないんだね」

「そうなの。だから、ここに来る前に知らせたいなって思ったの」

アカリは、来た道をふり返(かえ)った。

でも、どこに知らせるものを置(お)けばいいのだろう。

橋(はし)の近くなら、こわれたところが見える。でも、それでは知らせるのが遅(おそ)い。

分かれ道なら、二つの道をえらぶ前に知らせられる。

アカリは道のはしに落(お)ちていた、まっすぐな枝(えだ)をひろった。

「これで、場所(ばしょ)をたしかめてみよう!」

六人は分かれ道へもどった。

アカリは、橋(はし)へつづく道の入り口に枝(えだ)を立てかけた。

「ここに道しるべがあったら、見えるかな?」

ソラは、みんなが歩いてきた道を少しもどって、枝(えだ)を見た。

「あれ? どこにあるの?」

「ここだよ!」

アカリが手をふった。

ソラは首をかしげた。

「草にかくれてるよ!」

「えっ、ほんと?」

アカリはソラのいる場所(ばしょ)まで走った。

たしかに、さっき立てかけた枝(えだ)が草の中にかくれていた。

近くで見ると分かるのに、少しはなれると見えなくなる。

「そっか。ここじゃだめなんだ」

アカリは枝(えだ)をひろい、今度(こんど)は分かれ道の手前へ運(はこ)んだ。

道が広くなっていて、草もあまり高くない場所(ばしょ)だ。

分かれ道の手前で、アカリが枝を持って目印の場所をたしかめる。ソラとルウが見ている

「ソラ! 今度(こんど)はどう?」

「見える! そこなら、ずっと手前から見えるよ!」

アカリはうれしくなった。

そのとき、レイが草の道を見くらべながら言った。

「でも、道しるべには何を書くんだ?」

タクミもうなずく。

「橋(はし)がこわれてるって書けばいいのかな」

「それもいいけど……」

アカリは枝(えだ)を持(も)ったまま、少し考えた。

橋(はし)のところまで行かなければ、こわれているのが分からない。

だったら、ここに来た人には、先に知らせたい。

「ねえ、『この先の橋(はし)』って書いたらどうかな?」

「この先?」

ソラが橋(はし)へつづく道を見た。

「そっか! どこがこわれてるのか分かるね!」

「うん。それに、こっちの道の先だって分かるようにしたいの」

アカリは二つの道をさした。

「でも、もう一つの道がどこへ行くか、まだ分からないよね」

「そうだね」とルウがうなずいた。「そこは、これからたしかめよう!」

シンも、アカリが置(お)いた目印(めじるし)を見た。

「いい場所(ばしょ)を見つけたのう。道をえらぶ前に読めることが大切なんじゃよ」

アカリは、ほっとした。

みんなをよび止めたときは、少しどきどきした。

でも、言ってよかった。

みんなが楽しみにしていることも、自分が気になることも、どちらも大切にしていいんだ。

「じゃあ、道しるべはここに作ろうよ!」

「よし、決(き)まり!」とソラが言った。

タクミは、アカリの枝(えだ)を見て目をかがやかせた。

「あとで、ちゃんとしたものを作ろう!」

六人はもう一度(いちど)、草にかくれた道の入り口に立った。

今度(こんど)こそ、その先をたしかめに行く。

アカリは枝(えだ)を道のはしに置(お)くと、みんなのあとを追(お)った。

自分の考えを話せたことが、なんだかうれしかった。

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